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今回は、ホテルマーケットの動向について現状をみていきます。
訪日外客数は増加傾向にあり、2024年は約3,680万人でそれまで過去最高だった2019年の約3,180万人を上回っており、外国人の動きはホテルマーケットを下支えしているとみられます。
日本政府は訪日外客数の2030年目標を6,000万人とし、さらなるマーケット需要の底上げが期待されますが、足元でホテルマーケットに関連する統計はどのような状況を示しているでしょうか。
外国人動向については、日本政府観光局によると、2025年6月の訪日外客数の推計値は約330万人と前年同月比+8%で、アジアの中では特に中国が約79万人、前年同月比+20%と改善の勢いが強めとなっています。
香港は、日本で大地震が起こるという科学的根拠不明の噂が広まった中、約16万人と前年同月比-33%と大幅に減少しましたが、欧米に目を向けると、米国は約34万人と人数規模が拡大してきており、前年同月比+16%と改善しています(図表1)。
総じて、これまでの訪日外客数増加の勢いに陰りはないようにみられます。
出典:日本政府観光局「訪日外客統計」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
また、観光庁が公表する宿泊旅行統計をみても、外国人が全体を牽引していることが窺われます。2025年5月(第1次速報値)の延べ宿泊者数(日本人と外国人の合計)は約56.4百万人泊と前年同月比+3.7%、コロナ前の2019年同月比+9.7%と、ともに改善が継続しています(図表2)。
4月の延べ宿泊者数について地域別にみると、東京都が約9.3百万人泊と最も多く、次いで大阪府が約4.9百万人泊、京都府が約3.2百万人泊となっています(図表4)。
これら延べ宿泊者数上位の3地域につき、コロナ前の2019年同月比でみると、2025年4月は東京都が+32.1%、大阪府が+20.9%、京都府が+4.8%と、これまでの推移をみても特に東京都と大阪府の改善ペースの強さが窺われます(図表5)。
出典(図表2~5):観光庁「宿泊旅行統計」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
これらの地域においても外国人が全体の改善を牽引しており、それぞれの延べ宿泊者数に占める外国人比率をみると、東京都は60.9%、大阪府は49.6%、京都は66.7%と、宿泊需要の外国人依存度の高まりが窺われます。外国人の動きはホテルマーケットを支えているとみることもできますが、海外経済の悪化や為替の円高進行などの外部要因により、外国人の宿泊需要に大きな変化が生じる可能性があることには留意が必要です。
足元では訪日外客数は堅調ですが、日本へ旅行したいという外国人の潜在需要をより一層取り込むための受け入れ態勢が整備されているのかという観点で、次に各空港の国際便の便数を確認してみます。
以下の図表は国土交通省が公表する「各期の国際定期航空便の主な動向」から各空港における国際定期便数とその2019年同期比を示したものです(図表6、7)。
出典(図表6、7):国土交通省「各期の国際定期航空便の主な動向」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
これをみると、成田空港、中部国際空港、新千歳空港などは2025年夏季においても2019年同期比マイナスで、コロナ禍で落ち込んだ便数を回復しきれていません。
一方、羽田空港や福岡空港は2023年冬季より2019年同期を上回っており、2025年夏季は関西国際空港や那覇空港もプラスへと改善しています。外国人客数を今後より一層取り込んでいくことを想定するのであれば、受け入れ態勢のさらなる拡充が期待されますが、空港現場での人手不足がボトルネックとなっているとの見方があります。
国土交通省のワーキンググループで提示された「グランドハンドリング(※)業務における現状と取組状況」では、航空機の運航に不可欠な空港業務(グランドハンドリング・保安業務)においては人手不足の現状が指摘されており、国際便の増便のためには人材確保・育成の推進が課題のうちの1つとされています。
こうした空港の受け入れ態勢整備に関する取り組み推進は外国人客数の動向、ひいてはホテルマーケット需要へ影響を及ぼす可能性があるため、動向には注目していきたいところです。
※航空機の地上支援業務全般のことで、手荷物の積み下ろし、搭乗手続きなど、飛行機運航に際しての必須業務が含まれる
※本記事作成時点:2025年7月25日
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