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今回は賃貸住宅の賃料動向について、建築コストや地価の状況も合わせて見ていきます。
建設業界においては恒常的に人手不足の状況が続いており、建築コストも上昇が続いてきました。開発コスト高の中、足元での賃貸住宅の賃料動向を改めて確認していきたいと思います。
まず、コストの動向について建設物価調査会が公表する東京の建築費指数の動向を見ていきます。
2015年平均を100とした集合住宅の建築費指数の推移を見ると、足元の2025年9月は2015年平均よりも40.6%増と上昇傾向が続いています(図表1)。

世界的なコモディティ価格の上昇、円安による原材料輸入コストの増加に加え、建設業界における人手不足に伴う人件費上昇などが背景にあると推察されます。前年同月比での上昇率は4.9%増と上昇率は徐々に鈍化していますが、依然として建築費が上昇している状況は続いています(図表2)。

出典(図表1、2):⼀般財団法⼈ 建設物価調査会「建設物価 建築費指数」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
また、土地の価格も上昇してきています。
国土交通省が公表する東京23区の地価公示の前年比増減率を見ると、住宅地は2022年から伸び率が拡大し、2025年には7.9%上昇となっています(図表3)。

出典:国土交通省「地価公示」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
土地の価格が上がってきていることに加え、上述の建築費も上昇してきていることから、開発コストは数年前に比べて大きく上昇しています。賃貸住宅の開発コスト高を鑑みると、賃料収入も上げていかなければ、運用利回りが低下、もしくは採算が合わない可能性もあるでしょう。
それではここで足元の賃貸マンションの賃料動向を見ていきましょう。
アットホームが公表する賃貸マンション募集家賃動向によると、足元の2025年9月の動きを見ても各面積帯ともに引き続き上昇傾向かつ2015年1月以降で最高値を更新しています(図表4)。

出典:アットホーム株式会社「全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
中でもシングルは2024年6月から2025年9月にかけて前月比で見て16か月連続で上昇し、2025年9月の賃料は2024年5月より12.4%上昇しました。建築コスト高の局面で供給された物件は特に上述のように運用利回り低下の可能性があり、採算性の観点から、賃料に上昇圧力がかかりやすいと推察されます。
また、分譲マンション価格が引き続き高水準であることから、23区内への居住ニーズはあるものの購入を見送る消費者の需要が賃貸住宅へ流れると想定すると、賃貸マンション賃料上昇につながっている可能性が考えられます。
不動産経済研究所が公表する新築分譲マンション平均価格を見ると、東京23区は高値の状況が続き、足元の2025年9月までの動きを見ても1億3,000万円超の状況となっており、分譲マンション価格が今後も高止まり、もしくはさらに上昇するとなると賃貸を検討する需要層が増えていくことも想定され得ます(図表5)。

出典:株式会社 不動産経済研究所 「マンション市場動向」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
今後の賃貸マンション市況を見るうえでは、建築コストの高止まりがどこまで続くのか、地価の水準はどのようになるのか、データを定点観測していく必要があります。
※本記事作成時点:2025年10月31日
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