
国内金利とJ-REIT市場の動向について
今回は足元の賃貸住宅市場の動向について、東京都における需要と供給関連の指標、賃料動向を中心に見ていきます。
需給については、人口動態や住宅着工戸数の動向を中心に確認していきます。
まず人口動態ですが、総務省が公表する「住民基本台帳人口移動報告」から東京都における人口の転入超過数(=転入者数-転出者数)の推移を見ていきます。
直近の2026年5月までの推移を見ていくと、東京23区と東京都下は2022年以降総じて転入超過での推移となっています(図表1)。

人口流入は続いており、賃貸マンション需要を下支えしている状況が続いているとみられます。
一方、転入超過数の前年同月比から人口流入の勢いを確認すると、東京23区は減少傾向で、東京都下は総じて増加傾向となっています。
東京23区では人口流入は続いているものの、前年ほどではなく、流入の勢いは徐々に鈍ってきていることがうかがわれます(図表2)。

首都圏で東京都以外の県に目を向けると、2026年1月から直近の5月までの転入超過数の合計は東京都が86,644人、埼玉県が30,788人、千葉県が27,219人、神奈川県が38,991人で、前年同期(2025年1~5月合計)と比べると東京都は東京23区の鈍化の影響で9,000人超減少の一方、埼玉県は6,000人超増加と、首都圏の他3県では特に埼玉県と神奈川県で人口流入の勢いが強まっています(図表3)。

出典(図表1~3):総務省「住民基本台帳人口移動報告」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
今後も東京23区における人口流入の勢いは鈍化し、首都圏の他地域での勢いは強まっていくのか、賃貸需要の分布を考えるうえで、定点観測しておきたい点です。
次に供給サイドの状況について、国土交通省公表の「住宅着工統計」から貸家の住宅着工戸数の推移を見ていきます。
着工戸数は単月ではブレが大きいので年間移動平均での供給トレンドを見ると、東京23区では着工水準が徐々に低下しています(図表4)。

また東京都下は2026年1月にかけて緩やかに増加した後、足元は一方的な増加は回避されている状況であり、供給が勢いづいているとはみられません(図表5)。

出典(図表4、5):国土交通省「住宅着工統計」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
こうした供給動向を見るうえで、建築コストの動向の確認も欠かせません。
以下は建設物価調査会の建築費指数の前年比上昇率の推移です(図表6)。

出典:⼀般財団法⼈ 建設物価調査会「建設物価 建築費指数」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
住宅は2022年10月に+10.6%とピークを迎えた後は、鈍化してきており、直近の2026年6月は+4.8%となりました。ペースは以前ほどではないものの、コスト上昇は継続しており、引き続き事業採算面を鑑みた選別的な供給が行われると推察されます。
上記のような需給の状況下、賃料の推移について確認していきます。
以下はアットホームと三井住友トラスト基礎研究所が公表する「マンション賃料インデックス」について、2009年第1四半期を100とした東京23区および東京都下の指数推移を示しています。東京23区では各タイプで賃料上昇が続いており、2026年第1四半期は前年同期比での上昇率が、シングルは+8.1%、コンパクトは+5.6%、ファミリーは+12.3%となり、市況の堅調さがうかがわれます(図表7)。

特にシングルは前期の+5.5%から、コンパクトは前期の+4.0%から上昇率が拡大しました。
一方、東京都下も賃料は各タイプで上昇が続き、2026年第1四半期は、シングルが+5.2%、コンパクトが+5.4%、ファミリーが+2.9%でした(図表8)。

出典(図表7、8):アットホーム株式会社、株式会社三井住友トラスト基礎研究所「マンション賃料インデックス」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
上述のように堅調な人口流入を背景に賃料上昇が続いていますが、アットホームが公表する「全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向」を見ると、マンション賃料水準は東京都下と東京23区の間で依然開きがあります。
2026年5月の募集家賃は、東京23区のシングルが113,180円、カップルが181,237円、ファミリーが257,105円の一方、東京都下のシングルが66,284円、カップルが102,239円、ファミリーが141,790円でした。
23区よりも低めの賃料水準を背景に東京都下への人口流入が勢いづいている可能性も考えられますが、転入超過幅が拡大し賃貸需要増が見込まれやすい状況下で、東京都下の賃料上昇が今後も続くのか、需給バランスと合わせて観察していきたいポイントです。
※本記事作成時点:2026年7月17日
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