
日本経済のファンダメンタルズ-日本銀行による金融政策の判断ポイント-
今回は足元の国内金利とJ-REIT市場の動向について見ていきます。
金利昇局面で関連データがどのような推移をたどっているか確認していきます。
金利動向については、2026年6月16日の日本銀行金融政策決定会合で政策金利の0.25%pt引上げが実施されました。
具体的には政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)を、1.0%程度で推移するよう促すとされ、政策金利は31年ぶりの水準となりました(図表1)。

出典:一般社団法人全銀協TIBOR運営機関「全銀協TIBOR」、日本銀行「金融政策決定会合結果資料」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
政策金利が上昇する中で、企業の短期借入金利の指標となるTIBOR(Tokyo Interbank Offered Rate)3か月物も水準を上げ、政策決定会合の翌日の6月17日は1.412%にまで上昇しました。
金利の上昇はJ-REITの運用においても収益の下押し要因となりますが、足元のJ-REIT市場の動きを見ていきます。
東証REIT指数は2026年に入ってから軟調な展開で、2026年6月17日終値で1,771.64ptと2026年始から約12%下落しました(図表2)。

出典:日本取引所グループ「株価指数ヒストリカルグラフ」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
その間、東証株価指数TOPIXが約18%上昇したのとは対照的で、要因は複数あり断定はできないものの、金利コスト負担増が懸念されている面もあると推察されます。
東証REIT指数が下落する中、J-REITの分配金利回りと、イールドスプレッド(分配金利回り-10年国債利回り)についても見ていきましょう。
一般社団法人 不動産証券化協会が公表するJ-REITの分配金利回り(今期予想分配金の年換算額を投資口価格で除して算出)を見ると、J-REITの投資口価格が下落する中で2026年5月末は4.98%と足元は上昇しています(図表3)。

出典:一般社団法人 不動産証券化協会「ARES J-REIT Databook」、財務省「国債金利情報」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
一方、利上げが段階的に進んでいることもあり10年国債利回りは2026年5月末に2.7%程度まで上昇しており、対10年国債利回りのイールドスプレッドは2.3%ptまで縮小してきています。
上述では10年国債利回り対比でのJ-REITの投資妙味は低下してきていると推察されますが、こうした環境変化は、投資家需要や資金調達環境にも影響を及ぼす可能性があり、J-REITによる公募増資を通じた資金調達の動向にも留意が必要です。
以下では、公募増資の推移を確認します。
ここでJ-REITによる公募増資の推移についても見ていきます。
2026年1~3月期における公募増資は6件1,271億円と前年同期の1件40億円からは大幅に増加しました(図表4、払込日ベースで集計)。

出典:一般社団法人 不動産証券化協会「ARES J-REIT Databook」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
3月のジャパン・ホテル・リート投資法人による公募増資では、ホテル「ハイアット リージェンシー東京」を約1,260億円で取得するなど大型物件の取得案件がみられています。こうした動きから、当時はインバウンド需要の回復を背景に、J-REITにおいて外部成長を模索する動きがみられていたと考えられます。
ただし、足元では金利上昇が続く中、イールドスプレッドは縮小しており、投資妙味は以前と比べて低下している可能性がある点には留意が必要です。
また、東証REIT指数が下落していく中でNAV倍率は2026年5月末に0.84倍と低下してきており、公募増資へのハードルは高くなってきていると推察されます(NAV倍率についての詳細の解説は前回の記事「J-REITマーケットの足元の動向-公募増資の動きが徐々に出始めている-」をご参照ください)。
このような環境下で、2026年4月における公募増資は2件約339億円、5月は0件で、引き続き公募増資を通じた外部成長を続けることができるのか懸念が残る状況ではあります。
J-REIT運用の今後の動向を見ていくうえで、日本銀行による利上げペースについて引き続き注視が必要です。
※本記事作成時点:2026年6月19日
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