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不動産ST「知っておきたい3種のリスク」

KDX ST パートナーズ株式会社

2024年12月10日

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※この記事は、2024年10月時点での情報を元に作成しています。

「不動産セキュリティ・トークン(以下、『不動産ST』)を初めて聞くけど、どんなリスクがあるの?」
「聞いたこともない金融商品だし、リスクが高いのでは?」


2020年に施行された金融商品取引法の改正により2021年に日本で初めて公募された「不動産ST」は、株や債券といった伝統的な投資商品とは異なるリスク・リターン特性を有するオルタナティブ(代替的)投資の1つとして、近年脚光を浴びつつあります。

とはいえ、不動産STのリスクを知らずに投資を始めてしまうと、想定外の損失を被ってしまうおそれがあります。

不動産STの投資リスクは、主に以下3種類です。

・投資対象不動産に関するリスク
・不動産STに関するリスク
・不動産STの仕組みに関するリスク



※上記はあくまでも不動産STにかかる一般的な投資リスクであり、全てのリスクを網羅しているわけではありません。個別の不動産ST銘柄の投資リスクの詳細については、開示されている有価証券届出書などをご覧ください。

そこで本記事では、不動産STの主な投資リスクについてご紹介します。

目次

  1. 不動産STのリスク1|投資対象不動産について
  2. 不動産STのリスク2|不動産STについて
  3. 不動産STのリスク3|不動産STの仕組みについて
  4. まとめ

不動産STへの理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。

※本記事では、特段の断りがない限り「不動産ST」を「不動産または不動産関連資産を裏付け資産とする受益証券発行信託の受益証券」として説明しています。


1.不動産STのリスク1|投資対象不動産について

不動産STは、不動産または不動産関連資産を裏付け資産とした有価証券の1つです。

そのため、投資対象不動産のリスクが不動産STの投資リスクに直結します。

投資対象不動産のリスクは、さらに細かく以下5点が挙げられます。

投資対象不動産に関するリスク
1. 投資対象不動産の価格変動リスクや、鑑定評価額との価格乖離リスク
2. 投資対象不動産の収益・費用変動リスク
3. 投資対象不動産の売買流動性に関するリスク
4. 投資対象不動産の利用状況・賃貸借に関するリスク
5. 投資対象不動産の処分に関するリスク

※上記はあくまでも投資対象不動産にかかる一般的な投資リスクであり、全てのリスクを網羅しているわけではありません。投資対象不動産含めた個別の不動産ST銘柄の投資リスクの詳細については、開示されている有価証券届出書などをご覧ください。

以下、1つずつご紹介します。

1-1. 投資対象不動産の価格変動リスクや、鑑定評価額との価格乖離リスク

不動産ST保有によって投資家が得ることを期待できるリターンの1つに、事前に定められた運用期間終了後や早期売却期間などに投資対象不動産を売却する際の償還差益があります。

この償還差益は、「不動産売却価格から借入返済金等を差し引いた金額」の金額によって決まります。
※参考:不動産STは暗号資産(仮想通貨)・J-REITと何が違う?注意点・選び方も一挙解説

鑑定評価額によって不動産売却価格はある程度予測できるものの、鑑定評価額はあくまでも個々の不動産鑑定士の分析に基づく評価にすぎません。

売却時の価格はあくまで売主と買主双方の合意に基づくため、買主との交渉結果など不確実性の高い要素によっても変動します。

そのため、必ずしも開示された直近の鑑定評価額どおりの売却価格になるとは限らず、借入金の返済や費用の精算などにより、売却損となり元本割れするおそれがあります。

1-2. 投資対象不動産の収入・費用変動リスク

不動産STにおいて投資家が得られるリターンは、運用期間中の不動産運用益によっても変動する可能性があります。

不動産運用益は収入減少・費用増加により減少してしまう可能性があるため、一定の収益が常に得られるとは限りません。

【投資対象不動産の収入が減少しうる要因例】

・投資対象不動産の稼働率の低下
・賃料水準の低下
・テナントによる賃料の支払状況の悪化



【投資対象不動産の費用が増加しうる要因例】

・投資対象不動産の経年等による劣化への対応
・自然災害(地震など)による被災や事故の被害への対応
・業務委託先の報酬水準の増加
・法令の制定または改廃による影響



補足
法令制定によって不動産の費用が増加しうる一例として、「働き方改革関連法案」の施行が挙げられます。2024年から、建設業や運送業にも時間外労働上限が厳しく規制されることになり、人出不足に拍車がかかっています。

アセット・マネージャーは、不動産価値の維持・向上を目的としてリノベーションや修繕工事を行うことがありますが、物流コスト増や人手不足により資材調達コストや工事費といった経費などが想定以上にかさむ可能性もあります。

このように、不動産STが不動産または不動産関連資産を裏付けとする以上、不動産の収入減少や費用増加リスクを考慮する必要があります。

1-3. 投資対象不動産の売買流動性に関するリスク

不動産STを検討する際には、不動産の売買流動性に関するリスクも見逃せません。

不動産は一般的に、立地やデザイン、建物の状態など個別の特性が非常に強いため、同じような他の物件と簡単に置き換えることが難しく「代替性が低い」とされます。

また、代替性が低いために、購入希望者がその物件の特定の条件に合致するかどうかを見極める必要があり、不動産の調査(デューデリジェンス)や購入代金の資金調達などにより売買成立まで長い時間がかかるため「売買流動性が低い」といわれます。

このように代替性・売買流動性が低いことにより「必要なときに希望の条件ですぐに不動産を売却して現金化できる」とは限りません。これが不動産の売買流動性に関するリスクです。

【不動産の売買流動性に関するリスク例】

例えば、ある都市に建つオフィスビルを投資対象不動産と想定します。

このビルはユニークなデザインが特徴で、不動産取得時はその独自の建築様式や高級な内装が魅力の1つとされていました。しかし売却時には、その特異な特徴が逆に買い手を限定してしまう場合もあり得ます。

一般的なオフィスとしての使い勝手が悪かったり、改修に多額のコストが発生したりすると、市場での需要が限られ、売却時に適切な買い手を見つけるのが難しくなるかもしれません。

また、このオフィスビルが特定の企業の本社機能に合わせて設計されていた場合、その企業が移転を決定すると、後続の入居者がすぐに決まらず、空きビルとなります。新たな入居者がそのまま入れるような汎用性の高い設計でない場合、ビルに入居したいと思う企業も少なく、売却や再賃貸までの期間が長くなるでしょう。


このように、売買流動性が低く、適切な時期及び価格その他の条件で売却することが困難になると、最終的に投資家が得られるリターンが減少するおそれがあります。

1-4. 投資対象不動産の利用状況・賃貸借に関するリスク

「投資対象不動産の収入・費用変動リスク」と少し重複しますが、不動産の利用状況や賃貸借にかかるリスクにより、必ずしも理想的な運用状況を維持できるとは限りません。

たとえば、以下のようなリスクが考えられます。
【利用状況に関するリスク例】

・就業人口が増え共用部の水道光熱費が予想以上にかかりテナントからの共益費で賄えなくなる
・設備故障による停電や通信障害で入居者が損害を被り、入居者から損害賠償を要求される
・内装・外装等に多額の費用が掛かり、想定外のオーナー負担が発生してしまう
・原状回復工事に想定以上費用が掛かり、入居者負担を超える
・事故物件になってしまう



【賃貸借に関するリスク例】

・賃貸借契約期間中に入居者が退去してしまう
・賃貸借契約が更新されず、そのまま退去してしまう
・入居者が賃貸借契約に基づく賃料を支払えなくなる
・賃貸借契約の内容が当事者間の合意や法律の規定などに従って変更される
・入居者が退去した後、次の入居が決まらない


このように、運用期間中の利用状況や賃料収入次第で、受け取れる分配金などに影響があると覚えておきましょう。

1-5. 投資対象不動産の処分に関するリスク

こちらも「投資対象不動産の価格変動リスクや、鑑定評価額との価格乖離リスク」と少し重複しますが、投資対象不動産を売却する際もリスクが生じ得ます。例えば以下のような内容が考えられます。

【処分に関するリスク例】

修繕保証費用・損害賠償の責任:
不動産を売却後に欠陥が発覚した場合、修補費用負担や損害賠償義務が発生し、投資家へ元本償還するための原資を圧迫するおそれがあります。

売却関連費用:
不動産の売却時には仲介手数料やアセット・マネージャーへの売却時報酬など、さまざまな追加費用が発生します。

強制売却のリスク:
借入関連契約における期限の利益の喪失など、定められた条項に抵触してしまった場合、レンダー(貸付人)が不動産を売却する権限を取得して投資対象不動産を強制的に売却する可能性があり、元本償還に影響をあたえるおそれがあります。




2.不動産STのリスク2|不動産STについて

投資対象不動産だけでなく、不動産STそれ自体にもリスクが存在します。主に以下3点です。

不動産STに関するリスク
・不動産STの売買流動性・譲渡制限に関するリスク
・不動産STの価格に関するリスク
・不動産STの分配金および元本償還に関するリスク

それぞれについて、簡単に解説していきます。

2-1. 不動産STの売買流動性・譲渡制限に関するリスク

不動産STは、金融商品取引所に上場していないため、東京証券取引所などで売買できません。

そのため、J-REITや上場株式と比較すると、売買流動性および譲渡制限に関するリスクがあり、投資家の希望する時期や価格で売買ができるとは限りません。

【売買流動性・譲渡制限に関するリスク例】

・多くの不動産ST商品は売買の際に証券会社の店頭で売買取引(店頭取引)が行われており、投資対象不動産の収入・費用に重大な影響をおよぼす事象(自然災害や紛争、大幅な稼働率低下など)が発生した場合、当該ST取扱証券会社がST取引価格を算出する期間、取引が実施されない可能性がある
・譲渡制限付の不動産STは、指定されたブロックチェーンネットワークを介さずに譲渡することができない



2-2. 不動産STの価格に関するリスク

不動産STの価格は、投資対象不動産の鑑定評価額の上昇・下落に応じて変動するリスクがあります。

店頭取引での不動産STの価格は投資対象の不動産の鑑定評価額に基づいて設定されます。通常、不動産鑑定士の鑑定に基づく鑑定評価額から負債などを控除したNet Asset Value、略してNAV(純資産額)が、不動産STの取引価格を決定する際の基準となります。

補足
不動産STを店頭取引で証券会社が買い取る場合、通常、取引価格はNAVを基準として証券会社が決定します。

ところが、投資対象不動産の鑑定評価額は市況の変化などにより、上昇または下落することがあります。その結果、不動産STの価格も変動する可能性があります。

なお、前述の通り、鑑定評価額はあくまで分析時点での不動産鑑定士の分析・意見に基づくものであり、実際の市場価格(実勢価格)と一致するとは限りません。市場の動向や需要と供給のバランスによっては、鑑定評価額と市場価格が乖離することがあります。

このため、不動産STの取引価格は、実勢価格を基準に計算した場合と異なる可能性があります。

2-3. 不動産STの分配金および元本償還に関するリスク

不動産STの分配金や元本償還について、その金額や支払は保証されていません。

分配金は、投資対象不動産から得られる収益に基づいて支払われますが、収益が減少すると分配金もそれに応じて減少するおそれがあります。また、借入関連契約に定める一定の事由が生じた場合には、分配金の配当停止となるリスクもあります。

元本償還は、事前に定められた運用期間終了後や早期売却期間などに行われる「投資対象不動産の売却から得られる金銭」が主な原資となりますが、不動産の売却価格は不動産投資市場の状況によって変動するため、正確な予測が困難です。

売却価格が想定よりも低くなった場合、元本割れとなり、投資元本が目減りしてしまうリスクがあります。


3.不動産STのリスク3|不動産STの仕組みについて

不動産STの保有における「仕組みに関するリスク」とは、不動産STが多くの関係者に依存していることから生じるリスクです。

不動産STは、大きく分けて「受益証券の発行」と「投資対象不動産の管理処分」に関する2つの信託を用いて、実質的に不動産投資を行います。この段階で、以下のように数多くの関係者が関与しています。

【不動産STの仕組みにかかわる関係者の例】

・不動産STの販売証券会社・引受人
・アセット・マネージャー
・プロパティ・マネージャー(物件管理委託先)
・不動産ST発行を行う信託の受託者
・貸付人である銀行
・ブロックチェーン・プラットフォーマー


それぞれ重要な役割を担っており、たとえば、アセット・マネージャーが適切に不動産関連資産を運用できなかったり、プロパティ・マネージャーが投資対象不動産の物件管理を怠ったりした場合、収益性が損なわれる可能性があります。

また、これらの関係者の信用状態が悪化すると、不動産STの仕組みを維持できない可能性も考えられるため、投資家はスキーム関係者の信用リスクを間接的に負っているといえるでしょう。


4.まとめ

この記事では、不動産STのリスクとして3例を説明しました。

【不動産STのリスク】

・投資対象不動産に関するリスク
・不動産STに関するリスク
・不動産STの仕組みに関するリスク



不動産STには、さまざまな投資リスクが存在します。新たな投資商品として興味をもたれた方は、不動産STのリスクについても理解を深めましょう。

参考:不動産STは暗号資産(仮想通貨)・J-REITと何が違う?注意点・選び方も一挙解説


本記事は、KDX STパートナーズ株式会社(以下、「当社」といいます)および当社グループによる、不動産STに関する情報提供を目的としたものであり、投資の勧誘または斡旋を目的としたものではありません。
本記事に記載された内容については細心の注意を払っておりますが、掲載された情報の内容の正確性、有用性、完全性、また適切性等ついて、当社および当社グループは一切保証するものではありません。本記事において使用するデータおよび表現等の欠落・誤謬等について、当社および当社グループは一切責任を負いかねますので、ご了承ください。また、本記事に記載された内容は、本記事の作成時点のものであり、事前の通知なくして変更されることがあります。 本記事の中の記述は、作成時点で入手が可能な情報を基に想定される合理的な判断と考えておりますが、さまざまなリスクや不確定な要素が含まれている点にご留意ください。
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