
日本で金利が引き上げられる中、不動産投資への影響は?
2024年は日本でもマイナス金利がようやく解除され金利が動き始めました。日米ともに金融政策に変化が訪れる中、足元の為替市場はどのような推移をたどっているのか振り返ります。
為替は2024年始より円安が進行し、ドル円は2024年始の141円台から6月下旬に160円を突破し、その後は9月に140円台まで低下した後、再び反発し、11月6日の米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選確実となったことで直後は154円台後半まで上昇しました(図表1)。
出典: 日本銀行、FRBよりKDX STパートナーズ株式会社作成
トランプ氏の大統領就任で2025年に期限切れとなる個人所得減税の延長や法人税率引き下げが進められるとみられ、景気が刺激されることでインフレ圧力が強まり金利が高止まりすると捉える見方もあり、大統領選挙当日はドル高になったとみられます。
ただ、より根本的な円安の背景としては日米の金融政策の対照性も指摘されており、米インフレ率抑制に時間を要する中で政策金利が高金利で維持されるとの見通しがあった米国と、低金利から脱することに時間を要するとみられた日本との違いからドル高・円安のマーケットとなっていたと見られています。
6月にかけては米インフレ率の抑制に時間を要するとの見方からドル円は160円台まで上昇した後、7月下旬に日本銀行が政策金利を0.25%へ0.15%pt引き上げたことが要因となり円高へ反転した後、9月に140円台まで下落しましたが、日銀の決定に加えて重要なポイントは米雇用統計であったと見られています。
日本銀行が利上げを行ったことから、一般的には為替に対しては円高の影響を及ぼすわけですが、それに加え、米雇用統計の結果が円高への巻き戻しを促進したと考えられるためです。
原則、毎月の第1金曜日に米労働省労働統計局(BLS)が公表する前月分の米雇用統計ではいくつかの指標が公表されますが、特に金融市場が注目するのが非農業部門雇用者数(Nonfarm Payroll:以下NFP)(図表2)です。
出典(英語):米労働省よりKDX STパートナーズ株式会社作成
このNFPは農業部門以外の産業で働く就業者の数を集計したもので前月比での増減数が毎月公表され、為替をはじめ株式・債券といった金融市場へ大きな影響を与えます。
この米雇用統計におけるNFPが7月・8月分でそれぞれ市場予想を下回る弱さが示されたことで米労働市場減速への懸念が高まる中、マーケットでは、米FRBは利下げを積極的に進めていくのではないかとの観測が台頭し、8月から9月にかけてドル安円高の流れができるに至ったと見られています。
7月分のNFPは前月比114千人増と市場予想の175千人増から下振れ、前月の118千人増からも縮小したことから為替でドル安円高が進み、その後、日米の株式市場は大きく下落しました。
その後もNFPが金融市場における重要な材料となり、9月分は市場予想を大きく上振れ、前月よりも増加幅が拡大、改善したことで米利下げペースは緩やかになるのではとの思惑が強まり、ドル高円安への巻き戻しがみられました。
これに加え、米国の9月分の小売売上高(自動車除く)は前月比0.5%増と市場予想の0.1%増を上振れ、前月の0.2%増から拡大し、米景気の底堅さが示される中でドル円は10月に153円台まで上昇しました。
ちなみに10月分のNFPは急激な減少となりましたが、ハリケーンや大規模ストライキなどの特殊要因が影響したと言われており、雇用情勢の実態は不明瞭だったことから市場での反応は限定的でした。
NFP増減の推移を改めてみると、米国での高金利水準が続く中で増加幅は緩やかに縮小していますが、FRBに利下げペースを早めさせるほどには米労働市場は悪化していないとの見方もあり、金融市場では段階的に緩やかに利下げが進められていくとの見方が大勢です。
米雇用統計の結果はFRBの今後の利下げペースに大きな影響を与えるため、円が対ドルで円安・円高のどちらへ進行していくのかを見ていく上で、要注視の景気指標です。
※本記事作成時点:2024年11月8日
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