
日本で金利が引き上げられる中、不動産投資への影響は?
2024年11月5日投開票の米国大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利し、次期米大統領へ選出されました。
金融市場ではトランプ次期大統領の政策がどのような展開となるか読み切れていないところではありますが、今回はトランプ氏が掲げていた経済政策を改めて確認し、金融市場へ与え得る影響について整理していきたいと思います。
まず、トランプ氏が掲げる政策ですが、主に図表1のようなものがみられます。税制面ではいわゆるトランプ減税の恒久化があります。トランプ氏が前回に大統領を務めていた2017年に導入した個人所得税などの減税措置が2025年に期限を迎えますが、この減税を恒久化させる政策です。
また、法人税は現在21%ですが、一部製造業を対象に15%まで引き下げるとの主張もしています。いずれの政策も実現すれば景気を拡大させ得る材料となります。
出典:各種報道等よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
関税面では全輸入品に10~20%の一律関税をかけ、中国製品については60%にするとしており、各国の対米輸出が減少することが懸念されています。
加えて別の政策としては、米国内不法移民の強制送還が掲げられています。米国内においては、メキシコ国境から流入した不法移民が1,100万人超とも言われておりますが(2024年11月7日「産経新聞」)、トランプ次期政権ではこの不法移民を強制送還することが主張されています。
これらトランプ氏の政策ですが、いずれも共通しているのが「米国金利への上昇圧力となり得る」という点です。個人所得税や法人税の減税は景気を拡大させ得ると考えられ、インフレが再加速する可能性が指摘されています。
現在FRBはこれまで引き上げてきた政策金利の引下げを進めている段階にありますが、景気拡大によるインフレ加速を避けるために利下げペースを緩やかにする、もしくはいったん停止するということも考えられます。
また、高い関税をかけて輸入品が減少すれば供給不足となり物価が上昇する可能性がありますし、不法移民を強制送還することで人手不足が生じる懸念があり、その場合、賃金上昇圧力が強まりインフレ率が上昇する可能性が考えられます。これらの際も、インフレ加速を避けるため利下げは進めづらく、政策金利の高止まりにつながり得ると考えられます。
2024年11月末時点では日米の政策金利誘導目標はFRBが4.50%~4.75%の範囲で、日本銀行は0.25%程度とされています。
日本では2024年にようやくマイナス金利から脱したとは言え、これまで利上げを続けてきた米国の金利との差は大きく、上述のトランプ氏の政策によって米国金利が高止まりすれば、日米金利差から為替では円が対ドルで上昇する材料には乏しいとみられます。
一方、日本でベアなど賃上げが2025年以降も継続し、所得環境が改善、所得増に伴う消費増によって物価が上昇していくなど金融正常化への条件が整えば、日本銀行による利上げが進み、対ドルで円が足元の水準よりは上昇していくことも考えられます。
※本記事作成時点:2024年11月22日
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