
日本経済のファンダメンタルズ-日本銀行による金融政策の判断ポイント-
今回は、日本の金融政策、国内金利およびマクロ経済の動向について把握していきます。
日本銀行が段階的に政策金利を上げていく中、国内の金利動向はどうなっているのか、また、その背景としてのマクロ経済の環境についても見ていきます。
日本銀行は2026年9月の金融政策決定会合で、政策金利を1.25%へ引き上げました。段階的に利上げが進んでいますが、その背景について考えると、まず挙げられるのはインフレ圧力の高まりです。
2026年に入ってからの中東情勢の緊迫化を背景とした原油高でエネルギーコストが押し上げられており、物価上振れリスクへの警戒感が強まっています。
日本銀行は2026年7月公表の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)において、原油価格上昇・AI関連需要の増加・為替の円安などを背景に、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が「2026年度後半以降、2%をはっきりと上回る水準まで伸び率を高めていくと予想される」と示しています。
9月の決定会合後の日銀植田総裁の会見では、中東情勢の影響がインフレを上振れさせる方向に作用していることが言及されています。
こうした状況では、中央銀行の金融政策対応が実際の経済や物価の動きに対して後手に回っている状態である「ビハインド・ザ・カーブ」(Behind the curve)のリスクが意識されます。
日本銀行が基調的な物価上昇率を把握するうえで重要と指摘する「コア指標」を見ると、足元では日銀が目標水準とする2%を上回る状態が続いていることが観察されます。
ここでのコア指標とは、制度変更等の特殊要因(「消費税率の変更」・「教育無償化政策」・「2021年の携帯電話通信料の引き下げ」・「旅行支援策」・「ガソリンや電気・ガス代等の負担緩和策」)を除いたもので、生鮮食品および特殊要因を除いた消費者物価上昇率は2%を超える水準で推移していることが分かります(図表1)。

※特殊要因:「消費税率の変更」・「教育無償化政策」・「2021年の携帯電話通信料の引き下げ」・「旅行支援策」・「ガソリンや電気・ガス代等の負担緩和策」
出典:日本銀行「消費者物価のコア指標」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
このような物価動向に鑑みて、インフレ加速のリスクを未然に抑える必要性が高まっていたと考えられます。
もっとも、金融引き締めを進めるためには実体経済がそれに耐えうる状況にあることも重要です。
国内のマクロ経済情勢に関して見ると、2026年4-6月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比年率1.4%増(季節調整済)と3四半期連続のプラス成長となっています(図表2)。

出典:内閣府「四半期別GDP速報」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
ただし、項目別寄与度では、輸出増、輸入減で純輸出入が+1.8ポイントと大きく寄与しており、企業設備投資は-0.7ポイント、民間住宅は-0.1ポイント、民間最終消費支出は0.0ポイントと内需の力強さは限定的でした。
一方、日銀は9月の決定会合で経済情勢について「中東情勢の影響を受けつつも緩やかに回復」しており、「中心的な見通しに概ね沿って推移している」と判断しています。こうした経済環境への認識を背景に、今回の利上げへ至ったと考えられます。
このような金融政策を受け、国内金利は上昇基調にあります。企業向け貸出金利などの指標として使われるTIBOR 3か月物(東京銀行間取引金利)は2026年9月30日時点で1.68%まで上昇しており、長らく続いた低金利環境から大きく水準を上げてきています(図表3)。

出典:一般社団法人全銀協TIBOR運営機関「全銀協TIBOR」、日本銀行「金融政策決定会合結果資料」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
TIBORは足元の政策金利のみならず将来の利上げ期待も反映するため、市場が追加利上げを一定程度織り込んできたこともうかがえます。
TIBOR上昇は企業の借入金利に影響を及ぼすものであり、一般企業のみならず不動産ファンド業界においても、資金調達コストは徐々に増加してきている状況にあります。
今後の日銀の金融政策に関し、植田総裁は決定会合後の会見で「今後の利上げペースについて、3か月に1回など何か特定のものを念頭に置いていない」とし、政策の既定路線はない旨が示されましたが、上述の原油高・AI関連需要・円安などによるインフレ圧力がどこまで続くのか、今後の国内金利を見通すうえでは物価動向を注意深く観察することが必要です。
※本記事作成時点:2026年10月2日
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