
物流マーケットを見る上のポイントは?-どのデータに注目するべきか-
前回記事(住宅マーケットを見る上のポイントは?-どのデータに注目するべきか-)では、個別アセットのマーケットを見る上でのポイントについて、住宅をテーマにお伝えしましたが、今回はホテルマーケットについて取り扱っていきます。
2025年3月11日付の記事(不動産投資における各アセットクラスの特性はどのように異なるか? -リスク・リターンを中心に-)でも解説しましたように、ホテルの収益率は他のアセットと比べ、変動の幅が大きく、コロナ禍においてはインカム・キャピタルともに収益が低下する局面がみられました。
背景として、ホテルマーケットは外国人による需要の影響を受けやすいことが考えられますが、今回はその需要動向を把握する上で見ておくべきデータをご紹介したいと思います。
まず、重要なデータとして挙げられるのは観光庁が公表する「宿泊旅行統計調査」です(図表1)。こちらの統計は日本全国及び地域別の宿泊施設における延べ宿泊者数などを示したものです。
図表1で2007年以降の推移をみてみましょう。
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
全国の延べ宿泊者数は2010年以降コロナ禍を迎える前までは概ね増加傾向にあり、2019年には約5億9千万人泊にまで達しました。その後、コロナ禍により社会経済活動が制限された2020年、2021年に大きく落ち込んだ後は再び増加に転じ、2024年は約6億5千万人泊と過去最高の水準になっています。
即ちホテルの需要環境は足元では改善してきていると言えるでしょう。中でも2024年の宿泊者数の内訳をみると、日本人は約4億9千万人泊、外国人は約1億6千万人泊で、それぞれの数字を2023年の実績と比較すると、日本人は約1千万人泊減少している一方、外国人は約4千万人泊増加していることから、外国人宿泊者の増加が全体を牽引していることがわかります。
外国人のホテル需要動向を地域別に見ると、東京と京都、大阪で特にその割合が増えてきており、2024年の各地域の延べ宿泊者数に占める外国人の比率をみると、東京は約51%、京都は約50%、大阪は約44%と、それぞれ過去最高になっています。
外国人の宿泊需要が底上げされることによってホテル需要全体が改善していくことは、ホテルマーケット全体にとっては歓迎される話ではある一方、外国人宿泊者への依存度が高まっていることで、今後海外経済や他国との外交関係などの外部要因によって外国人旅行者数、ひいては外国人のホテル需要が大きく変動するリスクがあることには留意が必要です。
次にご紹介するのは、入国外国人旅行者数等を公的に参照できる有用なデータである、日本政府観光局(JNTO)が公表する「訪日外客統計」です(図表2、3)。
出典(図表2、3):日本政府観光局「訪日外客統計」よりKDX STパートナーズ株式会社作成
「訪日外客統計」では、訪日外国人客数が月次ベースで毎月公表されており、2024年の年間推計値は約3,680万人と過去最高となりました。
国籍別では韓国が約880万人、中国が約690万人、台湾が約600万人、香港が約260万人の順に多く、中でも韓国と台湾、および香港はコロナ禍前の2019年を上回る水準にまで増加しています。
一方、中国は韓国に次いで高水準ですが、2019年の約950万人にまでは戻っていません。中国では不動産市況の悪化などを背景に個人消費が鈍化しており、日本のインバウンド需要にも影響を与えている可能性があります。
政府は2030年の訪日外客数の目標を6,000万人に設定していますが、中国の動向も含め、訪日外客数が今後も堅調に推移するのかどうか、ホテルマーケットを見通す上で今後も定点観測が必要な指標であると言えます。
※本記事作成時点:2025年3月25日
本記事は、KDX ST パートナーズ株式会社(以下、「当社」といいます)および当社グループによる、不動産STなどに関する情報提供を目的としたものであり、投資の勧誘または斡旋を目的としたものではありません。
本記事に記載された内容については細心の注意を払っておりますが、掲載された情報の内容の正確性、有用性、完全性、また適切性等について、当社および当社グループは一切保証するものではありません。また本記事において使用するデータおよび表現等の欠落・誤謬等について、当社および当社グループは一切責任を負いかねますので、ご了承ください。
また、本記事に記載された内容は、本記事の作成時点のものであり、事前の通知なくして変更されることがあります。
本記事の中の記述は、作成時点で入手が可能な情報を基に想定される合理的な判断に基づくものと考えておりますが、さまざまなリスクや不確定な要素が含まれている点にご留意ください。
本記事の著作権その他の権利は、特段の断りがない限り、当社に帰属しています。