
物流マーケットを見る上のポイントは?-どのデータに注目するべきか-
以前の記事(住宅マーケットを見る上のポイントは?-どのデータに注目するべきか- )では、東京23区における賃貸マンション賃料は足元ではシングルやカップル、ファミリー向けで上昇が顕著であると解説しました。
その背景には、供給が抑制される中で人口流入が増加していることを指摘しましたが、今回はそれに加え分譲マンション価格の高騰が賃貸マンション市場へ与え得る影響についてみていきたいと思います。
まず、新築分譲マンションの平均価格ですが、首都圏は上昇トレンドとなっており、直近の2025年2月は7,943万円までになっています(図表1)。
出典:株式会社不動産経済研究所 「マンション市場動向」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
さらに首都圏をエリア別にみると、東京23区は2025年2月に1億392万円と水準の高さが顕著であり、今や東京23区では「億ション」は当たり前のものになったと言えるでしょう(図表2、後述)。
ちなみに2023年3月は東京23区の価格が2億1,750万円と急上昇がみられましたが、これは港区にて高額物件が売りに出された影響と推察されます。
東京23区のみならず神奈川県や埼玉県、千葉県においても分譲マンションの価格が上がっているわけですが、原材料費や人件費の上昇による開発コスト高という供給サイドの要因に加え、低金利の住宅ローンを活用した購買需要が背景にあると推察されます。
ここで賃貸マンション賃料と分譲マンション価格との関係について考えてみましょう。東京23区における分譲マンション価格は神奈川県、埼玉県、千葉県と比べて上昇が顕著で、消費者にとっては購入のハードルは年々高くなってきています(図表2)。
出典:株式会社不動産経済研究所「マンション市場動向」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
東京カンテイが公表した2023年の「新築マンション年収倍率」によると、新築分譲マンション価格(70㎡換算)を平均年収で除した年収倍率は全国で10.09倍、東京都で17.78倍、神奈川県で13.06倍、埼玉県で10.99倍、千葉県で9.61倍と東京都は全国1位の水準となっています。
消費者にとっては東京都心で住居を構えたいものの、高騰する分譲マンションの購入は控えざるを得ない場合、賃貸マンションに住むということが有力な選択肢となり得ます。実際にアットホーム株式会社が公表する東京23区における賃貸マンション賃料の推移をみると、分譲マンションが高騰していく中で特にファミリー向けの賃料の上昇が2022年頃より勢いづいています(図表3)。
出典:アットホーム株式会社「全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向」よりKDX ST パートナーズ株式会社作成
ファミリー世帯が高騰する分譲マンション購入を控え、賃貸マンションへ需要が流れてきていることが可能性として考えられます。
賃貸マンションの市況を見るうえで、需要面では人口流入、供給面では住宅着工の動きをみることが重要であると前回の記事でもお伝えしましたが、分譲マンションの価格動向も賃貸マンション需要に影響する可能性があるため、建築コストが依然高水準にある中で分譲マンション価格が今後どのような推移をたどるのか要注視と言えます。
※本記事作成時点:2025年4月18日
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